異種間恋愛の1ジャンルと言いますか、
ロボットの女の子と人間の恋愛というか、ロボットを人間のように扱ったりロボット自身が自分がロボットであることに悩んだりするのは定番とはいえ、感動を呼ぶからこそ定番にもなりうる鉄板設定だと思います。

ただ、だからこそ読み手のハードルも上がりがちになることもあります。
そして僕も異種間恋愛は非常に好きなジャンルですので結構チェックしますが、描きやすいから描いているという駄作に出会うことも少なくありません。

そんななかで偶然見かけた名作がこちら

【僕の妻は感情がない】です。

ストーリーは一人暮らしの会社員である主人公は仕事が忙しく家事をする暇がなかったので、安物の中古品である家事ロボット『ミーナ』を購入します。

同シリーズの上位機種は細かい表情などほとんど人間のように接する機能があるものの、ミーナは料理と食器洗いのみの機能制限版で冷蔵庫に食材を入れておけば登録レシピからランダムで料理を作ってくれる・・・まぁ主人公が最初に抱いた感想のように『ちょっと賢い炊飯器』くらいで接していました。

しかし毎日自分のために料理を作ってくれるミーナに対し、幾分上がった好感度と酔った勢いから「僕のお嫁さんになってくれない？」と聞いてしまいます。
当然ミーナは「かしこまりました。」と返答するものの、その日の夕食に出されたオムライスにはケチャップで『ＬＯＶＥタクマ』の文字が・・・・

翌日いくら説明書を読み直してもそんな昨日はありません。

悶々としつつも寝ようとすると、本来スリープモードになっているはずのミーナから「お好きなものを教えてください。」と聞かれ、暫く考えた後に「君がいちばん好きだよ。」と答え、翌朝からは奇妙な夫婦生活が始まり・・・・

さて、このミーナですが、
機能限定の廉価版というだけあって、基本的に表情も無く、受け答えも概ね機械的なやりとりではあるものの、タクマが飲みすぎだと判断するとビールを勝手に処分したり、ピクニックに行くことを提案して、今すぐではなく明日と聞いてシュンとしたり、電子レンジに対抗心を燃やしたりすることもあります。
ただまだこの時点では自分という商品価値を高めるように行動したり、持ち主の健康状態を第一に考える行動をするなど、まだ機械の範囲内の行動でしかありません。

しかし回を重ねるごとに自分が廉価版だったことでタクマと出会えたことを『良かった』と感じていたり、結婚指輪として贈られた指輪をじっと見つめていたり、他にも非効率的なことや、命令されてない行動を自分の判断で選択する描写が増えてきます。

でもミーナとタクマの距離が近づくほどにミーナの行動について考えさせられます。
人間の行動が記憶と経験に基づく反応が感情と考えれば、ロボットのそれも感情なのではとも言えますし、０から１を生み出せないとはいうものの、ミーナは経験を重ねることでシミュレーションの情報も増えて思考の選択肢も増えるようです。
ロボットの反応があらかじめ入っているプログラムなら、人間も同じようなものではないのか・・・

かの名作『攻殻機動隊』では脳を電脳に置き換え、それでも自分を自分たらしめるものという概念的な意味で『GHOST(ゴースト)』という表現を使っていましたが、ミーナにもゴーストがあってほしいと、読みながら二人の幸せを願ってしまうのです。

素直なハッピーエンドにはなれないかもしれない、でも少しずつ人間に近付いていく・・・基本的に無表情のはずが、実は初めからGHOSTを持っていたんではないかというミーナが愛おしく見えてきますし、そんなミーナをとても大切にするタクマ、二人を応援する妹、1巻の時点では嫌な奴は一人も出ませんので安心して読めると思います。

まだ物語はこれからですが、ロボっ娘異種間恋愛史に残る可能性のある一作だと思います。

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