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2022.03.31更新

中井祐樹という偉人

いつの時代にもどんな業界でも、突出した一人が歴史を上書きしてしまうことは珍しいことではありません。

科学理論を一足飛びに進化させたアインシュタイン、言わずもがな万能の天才レオナルドダヴィンチ、少しジャンルを絞れば時計の歴史を文字通り200年早めた天才時計技師アブラアン・ルイ・ブレゲ

知名度に多少の差はあれど
歴史上の偉人です。

それでは
《総合格闘技の歴史を10年早めた》当時の言葉としては「中井祐樹がいなかったら日本の総合格闘技はまだ10年遅れていた」・・・・この『中井祐樹』という名前は日本で何人が知っているでしょう?

令和4年現在【総合格闘技】といえば、多少格闘技を知ってる人はもちろん、一般層にも認知されている言葉ですし平成後期の格闘技ブームでは大晦日の民放テレビ局はことごとく格闘技一色という時代もありました。
現在はブームも落ち着き定番コンテンツとして、プロ志向だけではなくエクササイズの一環としてもスポーツの1ジャンルとして確立されています。

しかし時は遡って1995年
当時の総合格闘技はまだ異種格闘技戦の色合いが強く、社会的な評価も「メジャーじゃない連中がやってるバイオレンスなイベント」という風潮でした。
もちろんこの当時から格闘技ファンはグレイシー柔術のホイス・グレイシーが過激なルールに対応した戦略と技術で暴力性を封殺して優勝する光景を見て格闘技に新しい時代が来たことを肌で感じたりしていたものの、それでも社会との扉は開いておらず、件のホイスをして「自分の10倍強い。」と言わしめるヒクソングレイシーを日本に招聘して行われたバーリトゥードジャパン95(以下VTJ95)も、高い技術や新しいジャンルのスポーツに触れたい本気のファンより狂気性や暴力性を求める野次馬の方が多かったような気がします。

しかしより金を落とすのは後者ですし、広まることで社会に通じることが文化として確立される転換点であるならそこに乗るのも興行の方向性は正しいです。

ただそんな観客のニーズに合わせてか出場者の中にジェラルド・ゴルドーという狂人がいました。
約2mの身長に100キロ超の体重という規格外の体躯に空手やキックボクシングでは世界レベルの打撃技術・・・ここまでなら一流ファイタ―と言って過言ではありません。
しかし、普通の選手が反則をする理由としては、うっかりやってしまった、勝ちたいから、負けたくないから、中には嫌いな相手を壊したいからというのもいますがゴルドーの場合はそんな甘いものではなく、ちょっと不利になったからなんとなくやってしまうというほどに順法意識が低く、その行為も噛みつきやサミング(目突き)といった相手の人生を一変させるような行為に対しても躊躇が無いのです。

僕はこういった反則ファイターを全否定するのは、相手が反則しない=自分はリスクを負わない立場から一方的に攻撃できる状況を作りたいだけで、時々勝ちたい気持ちでつい出てしまったなどと擁護する声もありますが、数回続けばそいつは確信犯だと思いますし、自身を律することができないなら武道家でも競技者でもなく、ただのならず者です。

そして組まれたトーナメントの1回戦、身長170センチ、体重70キロの中井祐樹VSゴルドーという文字に観客が期待するのはスポーツの試合ではなく安全が保障された位置から見下ろす残酷ショーです。
中井祐樹自身もそれを分かっていましたが、マイナーな競技だった総合格闘技が明るい場所に駆け上がれるチャンスと、むしろゴルドー戦を『美味しい』とさえ思っていました。

試合は中井が巧みな技術でゴルドーを翻弄しますが、寝技になれば不利なのを自覚しているゴルドーはロープを掴んで倒されるのを防ぎます。
※ロープを掴んで堪えるのは反則ではない
そして下のポジションになった中井の顔面に重すぎるパウンド(グラウンド状態でのパンチ)を落とし、脚がフリーになれば踏み付けを敢行します。
打撃系の格闘技で死亡する事故は打撃そのものよりむしろマットに後頭部を打ち付けたりすることの方が多いのですが、中井の頭部は何度もゴルドーの拳とマットの間で、常人なら絶命しかねない威力でバウンドしますが、それでも僅かなチャンスをうかがいます。

そこで狂人であっても反則魔であっても闘う嗅覚は突出しているゴルドーはとうとう最悪の反則であるサミング(目突き)まで犯します。
しかも偶然入ったとか、軽く指を入れて相手を怯ませようとかではなく、一気に指を差し込み中井の視神経を寸断してしまいました。

この瞬間総合格闘家中井祐樹は死んでしまったようなものです。
この一件で失明したことで打撃ありのルールで戦うことは不可能になってしまいましたが、それでも気持ちが折れることは無く、1ラウンド8分を3度繰り返しての4ラウンド、ちなみに件のサミングは第1ラウンドですので、片目が見えない状態で延々とパウンドや踏み付けを浴び続け、我慢に我慢を重ねて作ったチャンスをものにして、ヒールホールドでゴルドーからギブアップを奪いました。

歴史が動いた瞬間です。

そのままの勢いで準決勝もアメリカのトップレスラーから腕十字でギブアップを奪い、ついに決勝戦では伝説のヒクソングレイシーと対戦、敗れはしたものの透き通るような試合はより深い感動を与えてくれました。

世間的には決勝戦後、ヒクソンが「ユーは侍だ」と評したことが【中井祐樹】という名前がブランド化した瞬間かもしれませんが、0を1に・・・というよりマイナスを一気にプラスに持っていったゴルドー戦が日本の総合格闘技界の分水嶺だったといえるでしょう。

そんなVTJ95を中井側視点で描いた渾身・・・でもあり懇親の本が

七帝柔道記 外伝です。
こちらは【木村正彦はなぜ力道山を殺さなかったのか】で格闘技のもう一つの歴史を描き切った増田俊也作『七帝柔道記』から続く柔道一代記の1節で、今回のVTJ95を記した本の中でも最高峰と僕が思っている

『VTJ前夜の中井祐樹』のコミカライズ版です。
※VTJ前夜の中井祐樹には他にもエピソードがありますが、それらも含めて増田俊也柔道サーガとも言うべき一代記です。

少し解説をすると『七帝柔道』というのはオリンピックなどの講道館柔道とは異なり寝技中心の競技で1チーム15人の勝ち抜き(勝者が残って次の相手と対戦)方式の団体戦、1本以外は引き分けなので、勝ち抜く役目の≪抜き役≫もいれば、そんな抜き役を止める〈分け役〉もいて文字通りチームのために死力を尽くす柔道です。


中井祐樹も増田俊也も北海道大学で七帝柔道に青春を捧げてきましたが、練習量が全てを決めると言われる七帝柔道なのに、死に物狂いで練習しているはずなのに万年最下位、目標は優勝どころか1勝・・・ウェイトトレーニングを導入し、道警本部に出稽古に行き、これ以上できないと思っていても強豪校には嘲笑される始末、それでもただ毎日を必死に練習して、ただ強くなることを信じて、オリンピックのような日向ではなくてもただ強くなりたくて本当の意味で『必死』に練習をして、それでも勝てない。

そんな暗闇の中を過ごしてきた増田たちの後輩として入部してきた中井は文字通り北大の歴史を変え、もちろん一人の力ではなく同じように頑張って積み重ねてきた仲間や他の大学でもライバルとしてしのぎを削った仲間たちあっての結果ですが、それでも中井は北大を七帝柔道の大会で準優勝へ、その翌年には優勝・・・でも僕がこの本でより感動した場面はたった1勝をあげるために費やした6年という時間です。

中井祐樹がその後北大を中退して総合格闘技の世界に足を踏み入れ、文字通り暗いトンネルでもがきながら、世間の評価というよく分からない相手と戦い続け、そしてあげた1勝、
ゴルドー戦前、増田氏は北大時代の仲間と観戦に訪れ中井に激励賞を渡しますがその封筒の中に一言だけ励ましの言葉を入れました。

「必ず試合前に届けて下さい!」と係に告げ、控室に届いた言葉は本当の意味でかけがえのない一言でした。
『七帝柔道記 外伝』では北大時代のエピソードとVTJのストーリーが絡み合いながら『まっすぐに頑張ること』の意味を問いかけます。

試合後、中井はテレビの出演時にもサングラスをかけ「まだ目が腫れてるから(笑)」とおどけていましたが、その時すでに光を失っていました。
その後もかなりの期間、失明の事実は伏せていましたが、その理由も危険な競技というレッテル貼りを避けるためです。

『今あるもの』に対し、人はそれが普通と思いがちです。
しかしそこには本当の意味で命を懸けた人の想いが脈々と繋がっています。

ここで少し補足すると、僕はこの文章の中で『中井祐樹』と呼び捨てにしていましたが、これは名前というブランドという意味で本当は『中井先生』と呼ばなければなりません。

僕がプロ修斗で選手として所属していたパレストラ東京(現パラエストラ東京)は中井先生が開設した道場で、僕は比較的初期のメンバーでした。
ただ入門当時僕は格闘技業界には疎く、VTJ95も知らない、もちろん中井祐樹という名前も知らず、パレストラ東京に入門した理由は通勤経路だったから、見学時の中井先生の印象も温和で飄々とした人だなというくらいでした。

いつもにこやかで笑顔を絶やさず、人を貶す事も無く、団体で変な壁を作るなんて面白くないよな(笑)と、旧体制の変なプライドも一笑に伏してしまう。
そんな姿からあの激闘を想起する人はほとんどいないかもしれませんが、それこそが本当に格闘技がイベントから文化に成熟した証なのかもしれません。

ですが、世界から認められなくても天動説を唱えたガリレオのように、命さえ手段としか考ず、力ずくで世間の風向きを変えた、神風を吹かせた偉人たちのおかげで今の『普通』は成立しているのです

だから僕は今現在の選手たちに、あるいはエクササイズでも、どんな形でも総合格闘技に触れている人に、現代の偉人たる中井先生の凄さを知らしめたいのです。

といってもきっと中井先生自身はいつも通り飄々としているような気がします(笑)

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こんな長文を急に書きたくなった理由ですが、
飛行機の中でこの『七帝柔道記 外伝』を読んでいたら隣の外人が「お前はユウキナカイを知ってるのか?」と尋ねてきて、ぶっちゃけ何言ってるかは完全には分からなかったものの、格闘技をやっていること、ヒクソングレイシーの過去の試合で中井先生の事を知ってること、自分は弱いが格闘技が好きで頑張ってるんだということ、大体そんな感じで話していました。

そして話の後半で自分も元はプレイヤー側だったこと、
ユウキナカイは自分の先生だということを伝えるといたく感動してくれました。

中井祐樹の凄さという意味でも、読書感想文という意味でも正直なところこの2冊+七帝柔道記の魅力には足りませんし、あえて書いていない内容もあります。

頑張り抜くことの尊さを感じたなら、
是非御一読をお勧めします。

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投稿者: 内村特殊法務事務所

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